高校数学の限界を知ろう~一橋大2005年後期素数の問題を例に~
最近ツイートで
”高校数学の限界を知ることが大切”という内容のツイートをしました。
今回は素数問題を使って限界を知ってそのうえでうまく解く方法を解説したいと思います。
例題は一橋大学の過去問。
p, 2p+1, 4p+1がすべて素数となるような素数pを求めよ
という問題。
シンプルながら整数問題の定石をわかっていないと初手で悩んでしまいます。
解説
整数問題の定石でこういうものをよく聞きませんか?
・実験して何か法則をつかむ
・因数分解
・何かで割ったあまりで分類する
なぜこうなるのでしょうか。
教科書をざっくり見返してみると大まかに見えてきます。
むしろこれくらいしか僕たちに整数問題を解くときの武器がないのです。
基本的に約数とかしか整理する概念のない整数では
数を何か×何かで分解する(因数分解)か
実は表に見えてこない法則性を見つけるくらいしかできることがないんです。
特に今回のような素数に関する問題では
素数というものが1以外のほかの数で割れないという性質を示すための方法は
素数の登場に規則性がないために
それまでに登場する全素数で割る必要があるため、
問題文が文字で書かれている場合には実質的に直接素数を示すことは不可能です。
そのため基本素数の問題は答えはこいつで残りはなんかで割れるから違うよね~という形で処理するのが
ほとんどとなってしまうのです。
これが表題でいう高校数学の限界なんです。
では今回の問題をどうでしょうか。
一次式なので因数分解はできそうにありません。
何かで割ったあまりでしょうか。
まず何で割ったあまりを調べるか考えましょう。
ここで生きてくるのが実験なんです。
きっと法則性があってごく一部しか素数になる組はないはずです。
つまりどこかの数が何かの数で割れるはず。
素数をどんどん代入していきましょう。
ここまで予想すれば安心して実験に取り組めますね。
’(ここまで予想できることも珍しいのでまぁ実験してみるかぁというノリも大切ですが)
p=2の時 (p, 2p+1, 4P+1)=(2,5,9)で9が3の倍数だから不適
p=3の時(p, 2p+1, 4P+1)=(3,7,13)なのですべて素数で題意を満たす
p=5の時(p, 2p+1, 4P+1)=(5,11,21)なので21が3, 7の倍数だから不適
p=7の時(p, 2p+1, 4P+1)=(7,15,29)なので15が3, 5の倍数だから不適
すべての場合で不適になる整数についてすべての素因数を列挙したのは
この実験がやみくもに行われたものではなくて
何で割ったあまりで分類するか方針を立てるために行った実験だからです。
じゃこの結果を見て何で割りますか?
すべて3の倍数だからもちろん3で割ったあまりで分類すればいいんですね。
そうすればp=3の場合以外はすべて(p, 2p+1, 4P+1)のどれかが3の倍数になることが示せて
解答が終わる可能性が高いです。
それでは解答を組んでみましょう。
解答
pを3で割ったあまりで分類する。
p=3k(kが自然数)と置く、
pが素数という条件からp=3しかありえない。
この時(p, 2p+1, 4P+1)=(3,7,13)より題意を満たす。
p=3k+1(kが自然数)のとき
2p+1=6k+3=3(2k+1)
つまりこの時2p+1は3の倍数である。
2p+1が素数となるのは3の場合しか存在しないがこの時p=1となり
pが素数であるという条件に反するので不適
p=3k+2(kが0以上の整数)のとき
4p+1=12k+6=6(2k+1)
この時2k+1はkが0以上の整数であることにより自然数。
つまりこの時4p+1は6の倍数である。
よって4p+1が素数となる場合は存在しない。
以上の結果からp=3の時の (p, 2p+1, 4P+1)=(3,7,13)の組が求める答えである。
解答を終えて
終わってしまうとこんなに操作としては簡単なのですがいかんせん最初の一歩が難しいのです。
ぜひぜひ最初の一歩をすぐ答えを見ずに実験して初めて見てください。
それではまたいつか。